空港検疫すり抜け9割…新型インフル感染者

2010年01月07日 讀賣新聞  讀賣オンライン


宮野悟、井元清哉、山口類は、佐藤弘樹氏(防衛医科大)、中田はる佳氏(東大医科研)、上昌広氏(東大医科研)と共に論文 When should we intervene to control the 2009 influenza A(H1N1) pandemic? を欧州感染症対策専門誌 Eurosurveillance に発表しました。 発表論文はこちら

論文では、4月下旬から5月下旬まで成田空港において行われた大規模な空港検疫の有効性をまず検証しました。その結果、入国前に発見できた感染者8人に対して、(1)季節性インフルエンザよりも長い潜伏期間(メディアン値は WHO の報告にあった3.5日)、(2)季節性インフルエンザよりも5%弱早い伝播、(3)空港での簡易キットの見逃し率3割の状況の下で約14倍の見逃しがある可能性を指摘しました。この推定には、インフルエンザ潜伏期間のガンマ分布によるモデル化、フライト中の発症確率の推定などの統計科学的な方法によるものです。

つぎに、感染者が日々刻々と流入してくる状況の中、インフルエンザパンデミックがどのように拡大していくかをシミュレーションできる数理モデルを SEIR モデルという感染症拡大をシミュレーションするためのモデルを拡張することで構築しました。そのシミュレーションモデルを用い、どのタイミングで社会封鎖や学校閉鎖に相当するような社会介入をどれくらいの規模で行うことが最も感染者のピーク数を下げ、かつ、ピーク時期を送らせることが出来るかについて研究しました。その結果、早すぎる介入は、必ずしも有効に働かないことを見出し、目的に応じた最適介入時期を探索できることを示しました。

この結果、空港検疫には、インフルエンザのような潜伏期間が長い感染症に対しては、感染者の入国を阻止するという役割はほぼ期待できないことが分かりました。より潜伏期間が長いほど、フライト時間が短いほど空港検疫では感染者は発見できません。このことから、空港検疫を「入国した感染者数を推定するためのモニタリングシステム」として利用し、推定した入国感染者数をその後の感染拡大のシミュレーションに用いることで、次に我々が取るべき総合的な対策のための一つの情報として利用することを提案しています。入国した感染者数の推定が出来て初めて社会介入のタイミングを最適化することが出来るため、統計的方法による空港検疫による入国感染者数推定、および、コンピュータを用いたパンデミックシミュレーションは、極めて重要な情報をインフルエンザパンデミックコントロールに与えると考えています。

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讀賣新聞2010年1月7日夕刊一面より

news/100107_flu.txt · 最終更新: 2011/03/21 09:52 (外部編集)